Japanische Klassiker mit Furigana
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てんき
転機
伊藤 野枝
Lesen Sie 転機 (てんき) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.656 Zeichen · 67 Bildschirme
堤防の内は一面に黄色な枯れ葦に領された広大な窪地であった。私達の正面は五六町を隔てた処に横たわっている古い堤防に遮られているが、右手の方に拡がったその窪地の面積は、数理的観念には極めて遠い私の頭では、ちょっとどのくらいというような見当はつかないけれど、何しろそれは驚くべき広大な地域を占めていた。こうして高い堤防の上に立つと、広い眼界がただもう一面に黄色なその窪地と空だけでいっぱいになっている。
その思いがけない景色を前にして、私はこれが長い間――本当にそれは長い間だった――一度聞いてからは、ついに忘れることの出来なかった村の跡なのだろうと思った。窪地といってもこの新しい堤防さえのぞいてしまえば、この堤防の外の土地とは何の高低もない普通の平地だということや、窪地の中を真っすぐに一と筋向うの土手まで続いている広い路も、この堤防で遮られた、先刻の町の通りに続いていたものだということを考えあわせて見れば、どうもそうらしく思われもする。けれど、堤防の中の窪地に今もなお居残って住んでいるという、今私の尋ねていこうという人達は、この広い窪地の何処に住んでいるのであろう? 道は一と筋あるにはあるが、彼の土手の外に人家があるとは、聞いた話を信用すれば少しおかしい。