Japanische Klassiker mit Furigana
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てんき
転機
伊藤 野枝
Lesen Sie 転機 (てんき) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.656 Zeichen · 67 Bildschirme
彼の愛を、彼に対する愛を拒否することは、もちろん私にとって苦痛でないはずはない。しかしそれはまだ忍べる。彼に対する信頼をすてることは、同時にせっかく見出した自分の真実の道を失わねばならぬかもしれない。それは忍べない。私はどうしても、どうなっても、あくまで自分の道に生きなければならない。
そうして、私はすべてを忍んだ。本当に体中の血が煮えくり返る程の腹立たしさや屈辱に出会っても、私は黙って、おとなしく忍ばねばならなかった。それはあらゆる非難の的となっている、私の歩みには、必然的につきまとう苦痛だったのだ。そして、私が一つ一つそれを黙って切り抜けるごとに、卑劣で臆病な俗衆はいよいよ増長して調子を高める。しかし、たとえ千万人の口にそれが呪咀されていても、私は自身の道に正しく踏み入る事のできたのは、何の躊躇もなく充分な感謝を捧げ得る。
谷中の話を聞いた当座の感激は、今の私にはもうまったくないといってもいい。しかし、その感激は知らず知らずのうちに俗習と偏見の生活に巻き込まれ去ろうとする私を救い出した。谷中村と云う名は、今はもう忘れようとしても忘れられぬ程に、私の頭に刻み込まれている。