Japanische Klassiker mit Furigana
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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
Lesen Sie 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.469 Zeichen · 157 Bildschirme
すると焦燥りに焦燥っている菊池武時は憤然として馬上のまま弓に鏑矢を番えた。
「この神様は牛か馬か。皇室のために決戦に行く俺の心がわからんのか。
武士のうわ矢のかぶら一すぢに
思ひ切るとは神は知らずや」
と吟ずるや否や神殿の扉に発矢とばかり二本の矢を射かけた。トタンに馬が馳け出したのでそのまま戦場に向ったが、もしこの時に武時が馬から降りて、神前に幸運を祈ったならば、彼は戦いに勝ったであろうものを、斯様な無礼を働らいて神慮を無視したために勤王の義兵でありながら一敗地に塗れた……』
衣冠束帯の神主が得意然とここまで喋舌って来た時に、自分と松浦愚の二人はドッチが先か忘れたが神殿に躍り上っていた。アッと云う間もなく二人で髭神主を殴り倒おし蹴倒おす。松浦が片手に提げていた醤油樽で、神主の脳天を食らわせたので、可愛そうに髭神主が醤油の海の中にウームと伸びてしまった。……この賽銭乞食の奴、神様の広告のために途方もない事を吐かす。皇室あっての神様ではないか。そういう貴様が神威を涜し、国体を誤る国賊ではないか……というたような気持であったと思うが、二人ともまだ十四か五ぐらいの腕白盛りで、そのような気の利いた事を云い切らんじゃった。