Japanische Klassiker mit Furigana
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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
Lesen Sie 追いついた夢 (おいついたゆめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.427 Zeichen · 41 Bildschirme
おけいはそっと隣の女房の側へ来て坐った。
「いつも済みません、おばさん」
「ぬるくなったかもしれないよ。良庵さんに出したあとだから……」
音を忍ばせて茶を注いでやり、自分のにも注いで、おむらはうかがうようにこっちを見た。
「どうだったの、話は」
「ええ定めて来たわ、すっかり」
「相手はどう、よさそうな人かえ」
「わからないけれど」おけいは湯呑を取って眼をそむけた、「――でもおっとりした人だったわ、少し肥っていて、丈夫そうな」
「どんな商売をしているの」
「それがわからないの、お店は大阪とこっちと両方にあるって云うし、かなり大きくやっているらしいんだけれど、そのお店がどこにあってどんな商売をしているんだか、尾花屋のおかみさんも知らないらしいのよ」
「そんなこと云っておけいちゃん、もしもその人が悪い事でもしている人間だったりしたら、いやじゃないの」
「しかたがないわ、あたしお金が要るんですもの」おけいは微笑した。
「たとえ相手が泥棒だって、凶状持ちだって、……でも大丈夫よおばさん、そんな人でないことは慥からしいから」
おむらは溜息をついた。それから衿へ掛けてある手拭の端で、なんとつかず口を押え、もういちど肩をおとして溜息をついた。