Japanische Klassiker mit Furigana
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ついそう
追想
宮本 百合子
Lesen Sie 追想 (ついそう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.582 Zeichen · 8 Bildschirme
去年のちょうど今頃、自分は、福島に在る祖母の家に行っていた。暫く東京を離れ、子供の時分から馴染深い田園の裡に静かな時を過したいと思ったのである。行って、一週間も経ったかと思う頃、K町の家から転送された沢山の書簡に混って、一つ、私には判らない葉書が来た。
差出人は、同級会幹事の誰それとしてあり、宛名は、まぎれもない自分だ。けれども、内容がはっきり心に写らない。文句は、深田様がお産で去月何日死去されましたから、御悔みのしるしに何か皆で買ってあげたい、一円以上三円位まで御送り下さい、というのである。
広い耕地を見晴す縁側の柱の下に坐り、自分は、幾度も、幾度も繰返して文面を見た。第一、なくなられたという深田という人が、誰であったか、どうしても思い出せない。女学校を出てから、殆ど五年ばかりになる。学校にいた時分と同じ姓なら、いくら、人の姓名に対して記憶の薄い自分も、これほど忘れ切ることはないだろう。ところが、卒業後五六年迄の間に、何という友達の苗字の変ることか。一人一人と結婚し、一人一人と、変った姓で呼ばれることになる。結婚してから幾年か経ちでもすれば、良人の姓にも馴れ、記憶に刻まれるのだけれども、今迄、呼びなれていた友の名が、何時の間にかまるで違ったものになり、前に現れると、自分は、すっかりまごついてしまう。