Japanische Klassiker mit Furigana
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れんかんき
連環記
幸田 露伴
Lesen Sie 連環記 (れんかんき) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 49.281 Zeichen · 95 Bildschirme
しかし物猶人の如くであったから、いつまでも傍に居たのであろう。そして或時思いも寄らず、吾が口を死人の口に近づけたのであろう。口を吸いたりけるに、と素樸に書いた昔の文は実に好かった。あさましき香の口より出来りける、とあるが、それは実に誰もが想像し兼ねるほどの厭わしい、それこそ真にあさましい香であったろう。死に近づいている人の口臭は他の何物にも比べ難い希有の香のするもので、俗に仏様くさいと云って怖れ忌むものであるが、まして死んでから幾日か経ったものの口を吸ったのでは、如何に愛着したものでも堪らなかったろう。然し定基は流石に快男児だった、愛も痴もここまでに到れば突当りまで行ったものだった。其時その腐りかかった亡者が、嬉しゅうござんす定基さん、と云って楊枝のような細い冷い手を男の頸に捲きつけて、しがみ着いて来たら何様いうものだったか知らぬが、自然の法輪に逆廻りは無かったから、定基はあさましい其香に畏れ戦いて後へ退ったのである。人間というものは変なもので、縁もゆかりも無い遠い海の鰹や鮪の死骸などは、嘗めて味わって噛んで嚥んで了うのであるから、可愛いい女の口を吸うくらい、当りまえ過ぎるほど当りまえであるべきだが、然様は出来ないのである。