Japanische Klassiker mit Furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme
五銭が当り前じゃ。」と、ふとった男の声がする。車の中では耳をそばたてた。
「五銭? 一人前七銭宛くれていい、お前達がこねぇから、客が困るっていうんだ。それでわざわざ車を出して来たんじゃないか。」と、のどを嗄すような声で一人が言う。
「馬鹿こけ。五銭でいやなら一文もやらぬ。」
「何だと?」
「何だと。」
「一体、お前達は……」と、一方がここまで出て来たことを繰り返して罵り立てた。それに向って、花巻から来た馭者はどうしてもその二銭を出さぬと言って罵る。
ガタリ……と車の中ではあとの方で二人の喧嘩するのに耳を立てて聞いていると、不意に馬車が動き出した。中の者はそれに驚いて見ると、馬は退屈そうに、ごとりごとり歩き出した。うしろに大きい車を引きずっているのもかまわぬと言った態で、首を長く伸して道ばたの草を喰いはじめた。それでからだを移すたびに、車はかたりと動く。
二人の喧嘩はまだ止まぬ。また馬車が動いた拍子に、輪が道のこわれかかったところにはいって車が傾いた。
「ワッ!」と中から叫んで立ち上ろうとしたものがある。
と同時に、一人が笑い出した。
「危い、危い、一体客をどうするんだ。