Japanische Klassiker mit Furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme
心が燃えて、烈しく慄えるようすが見える。その話もごつごつしていながら、そのうちに自ずから抑揚の調子が出て来て、人を魅する力がこもっている。彼は感情の高まった声をして、
「その山では、私の家によく来る隣村の猟師がこんな目に逢ったこともありますよ。夜待と言って、夜中、山に籠って猪を撃つことがありますが、それに行っていると、もう夜明けに近いと思うころに、山の頂上の方で、
あ痛あッ! という声が一声聞えたそうです。それが家にいる老母の声だったので、留守に何か悪いことがなければいいがと思って。夜が明けるとすぐ大急ぎをして帰って来て見ると、家では梁にさげてあった鉈が落ちて、その母さんが死んでいたそうです。それが丁度その声の聞こえた頃だったとか言うので、その男は猟師を止めてしまいました。」
「それからまだこんな話もあります。」と言うので、荻原は思い出しては、追っかけ追っかけ自分でも夢中になって話しつづける。
それで思わず夜が更けてしまった。私もつり込まれて聞いていたが、ふっと気がつくと、下ではもう寝静まっている。雨はまだやまないと見えて、ざあざあ、まっすぐに烈しい音をさせて降っている。