Japanische Klassiker mit Furigana
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じゃしゅうもん
邪宗門
Lesen Sie 邪宗門 (じゃしゅうもん) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.184 Zeichen · 79 Bildschirme
まさかそうまで御姫様が、思いつめていらっしゃろうとは、夢にも思召さなかったのでございますから、鴉の左大弁様は悲しいとも、嬉しいともつかない御心もちで、しばらくはただ、茫然と御文を前にひろげたまま、溜息をついていらっしゃいました。が、何はともあれ、御眼にかかって、今まで胸にひそめていた想のほども申し上げようと、こう思召したのでございましょう。丁度五月雨の暮方でございましたが、童子を一人御伴に御つれになって、傘をかざしながら、ひそかに二条西洞院の御屋形まで参りますと、御門は堅く鎖してあって、いくら音なっても叩いても、開ける気色はございません。そうこうする内に夜になって、人の往来も稀な築土路には、ただ、蛙の声が聞えるばかり、雨は益降りしきって、御召物も濡れれば、御眼も眩むと云う情ない次第でございます。
それがほど経てから、御門の扉が、やっと開いたと思いますと、平太夫と申します私くらいの老侍が、これも同じような藤の枝に御文を結んだのを渡したなり、無言でまた、その扉をぴたりと閉めてしまいました。
そこで泣く泣く御立ち帰りになって、その御文を開けて御覧になると、一首の古歌がちらし書きにしてあるだけで、一言もほかには御便りがございません。