Japanische Klassiker mit Furigana
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さけのついおく
酒の追憶
Lesen Sie 酒の追憶 (さけのついおく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.870 Zeichen · 14 Bildschirme
私が東京の大学へはいって、郷里の先輩に連れられ、赤坂の料亭に行った事があるけれども、その先輩は拳闘家で、中国、満洲を永い事わたり歩き、見るからに堂々たる偉丈夫、そうしてそのひとは、座敷に坐るなり料亭の女中さんに、
「酒も飲むがね、酒と一緒にビイルを持って来てくれ。チャンポンにしなければ、俺は、酔えないんだよ。」
と実に威張って言い渡した。
そうしてお酒を一本飲み、その次はビイル、それからまたお酒という具合いに、交る交る飲み、私はその豪放な飲みっぷりにおそれをなし、私だけは小さい盃でちびちび飲みながら、やがてそのひとの、「国を出る時や玉の肌、いまじゃ槍傷刀傷。」とかいう馬賊の歌を聞かされ、あまりのおそろしさに、ちっともこっちは酔えなかったという思い出がある。そうして、彼がそのチャンポンをやって、「どれ、小便をして来よう。」と言って巨躯をゆさぶって立ち上り、その小山の如きうしろ姿を横目で見て、ほとんど畏敬に近い念さえ起り、思わず小さい溜息をもらしたものだが、つまりその頃、日本に於いてチャンポンを敢行する人物は、まず英雄豪傑にのみ限られていた、といっても過言では無いほどだったのである。