Japanische Klassiker mit Furigana
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さけさかずきとっくり
酒・杯・徳利
山本 周五郎
Lesen Sie 酒・杯・徳利 (さけさかずきとっくり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.047 Zeichen · 9 Bildschirme
「正則は思わず、はらはらと落涙しながら、十郎左の屍体の前に崩折れるように坐って、胸から絞り出すような声で云った。
――よくぞ死んだ、十郎左――」
読む調べは故意に高められた情熱と、自分で煽おりつける抑揚のためにひどく張切った響をもっているが、青年の眸子はおよそその調子とは逆に、空虚で、暗澹としている。青年は眼を閉じて、数日前にやって来た通俗雑誌の記者の顔を思い出した。毬のように肥えた男であった、両頬に髭の剃り跡が青く、肉の厚い唇は絶えず活溌に運動を続けていた。
――要するに、これは面白い! と読者が案を打つようなものですな、すっと筋が通っていて、しかし何処かぐいっと突っ込んだところも欲しいです、註文を申せば色模様にからんで、ほろっとくると云う深刻なものですな、どうかひとつそんな点を御考慮願って――。
青年は低く呻いて、その記者の幻想をかき消しでもするように、強く頭を探りながら再び盃を取り上げた。酒は蓬のように苦く、酔は胃の中にこちんとかたまっている、刺し身も芋棒も、石灰を甜めるように徒に舌をよごすばかりで、脂肪のたまった食道を頓には下りて行かない。