Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅうぶん
醜聞
山本 周五郎
Lesen Sie 醜聞 (しゅうぶん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.900 Zeichen · 46 Bildschirme
山には稲荷神社の小さな祠があるので、そんな噂がでたものらしい。これまで幾たびか藩主の狩りがおこなわれたが、猪と鹿のほか、狐などは一疋も獲れたことはなかった。
「だが、いまさのやの離れ座敷には狐がいる」と彼は頭巾で顔を包みながら呟いた、「化かされないように気をつけろよ」
いちばん端の離れ座敷に、さくらは来て待っていた。そこにはもう酒肴の膳が二つ据えてあり、さくらが手酌で飲んでいた。丸行燈が一つ、赤あかと炭火のおこっている手焙りが二つ、さくらの脇に燗鍋をのせた火鉢があり、それには燗徳利が二本はいっていた。
「顔を知られたくないのね」さくらは功兵衛の頭巾を見て笑った、「不自由だこと」
「もう酔っているのか」
「まだこれで三本めよ、あたしは酒なんかじゃもう酔えやしないんですから、と云ったところでこういううちじゃあ焼酎なんかありゃあしないでしょ、だから」とうす笑いをしながら、さくらは火鉢の横から酒徳利を出して見せた、「このとおり買って来たのよ」
たぶん古着屋で買ったものだろう、こまかい滝縞の着物に、小さな紅葉を散らした帯をしめ、髪も結っていた。結婚したのが十八の年だから、いまはまだ二十八歳の筈だが、皺たるんだ膚や、肉をこそげ取ったような頬、おちくぼんだ眼などを見ると、どうしても四十より下とは思えなかった。