Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅうべえさんのいっか
重兵衛さんの一家
寺田 寅彦
Lesen Sie 重兵衛さんの一家 (じゅうべえさんのいっか) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.089 Zeichen · 14 Bildschirme
母や祖母は自分が亀さんと遊ぶことをあまり喜ばなかったらしい。亀さんは実際「行儀の悪い」子供であったろうし、また随分いたずらものでもあったらしい。草原の草を縛り合わせて通りかかった人を躓かせたり、田圃道に小さな陥穽を作って人を蹈込ませたり、夏の闇の夜に路上の牛糞の上に蛍を載せておいたり、道端に芋の葉をかぶせた燈火を置いて臆病者を怖がらせたりと云ったような芸術にも長じていた。月夜に往来へ財布を落しておいて小蔭にかくれて見ている、通行人があたりを見廻わしてそれを拾おうとするときに、そっと手許の糸を手繰ると財布がひとりでするすると動き出すというような深刻な教育法をも実行した事があったようである。こういう巧智はしかしことごとくが亀さんの独創によるものではなくて、大部分は重兵衛さんの晩酌時の講話の時に授かったものであった。重兵衛さんの寺子屋時代の悪戯にはずいぶん過劇なものもあったようである。
こういう、学校では教わらない悪戯教育も、今から考えてみると自分には色々な意味で有益であり貴重なものであったように思われる。人生行路に横たわる幾多の陥穽に対する警戒の芽生えを植付けてくれたような気がする。