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Japanische Klassiker mit Furigana

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じゅうきちひょうりゅうきぶん

重吉漂流紀聞

久生 十蘭

Lesen Sie 重吉漂流紀聞 (じゅうきちひょうりゅうきぶん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.456 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

ぞ、父さんはあそこにござるなどというのだろう。あゝ、帰りたい、帰りたい。皆の顔が見たい」

すると音七という二十四になるのが、

「おぬしらは、そうして恋しい恋しいと思うばかりなのか。おれのほうはそれどころのことか。出がけに銭を五百ばかり置いてきただけだから、それが心にかかってならぬ。国を出てから、これでもう三月。今ごろは食うあてもなくなり、人の門に立って、どうぞや、お余りでもと、物乞いをしているのだろう。それを思うと、胸が張り裂けるようだ。あゝ、切ない切ない」といって泣く。

重吉もまだ二十四で、帰りたい気持はおなじだが、浪風の苦だけでもたくさんなのに、故郷を思い、親や妻子のことを案じて泣いてばかりいては、そのうちに病いついてしまうだろう。せっかくどこかの島へ漂い着いても、病気になって死ぬのではつまらない話だと思い、

「親や妻子を養おうと思えばこそ、船乗になって憂き艱難しているが、たとえ妻子に食う宛が無くなっても、親方もいれば仲間もいる。どれほど困っても、われらのように豆の粉を食うまでにはいたるまい」

と宥めたが、音七は、そうは思えない、そうは諦めかねると、身も世もないように泣く。