Japanische Klassiker mit Furigana
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のざらし
野ざらし
豊島 与志雄
Lesen Sie 野ざらし (のざらし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.100 Zeichen · 39 Bildschirme
沢子のことを思うと、輝やかしい気がした。そういう闇の暗さと光の明るさとが、同時に、全く正比例して強くなったり弱くなったりした。そして、沢子を連れて九州へ行くことは、到底望み得られなかった。
「兎も角も俺は決心をきめなけりゃならないのだ!」
昌作は殆んど絶望的にそう呟いて、清楚とも云えるほど上品な趣味で化粧品類が並べてある店の方をちらりと見やりながら、柳容堂の薄暗い階段を上って行った。明るいわりに心持ち狭い二階の室に出ると、彼は俄に眼を伏せて、壁際の小さな円卓に行って坐った。
薄汚れのした古いペーパーの洋酒瓶が両側にずらりと並んで、真中に大きな鏡のついてるスタンドの向うから、きりっと襟を合した沢子の姿が現われた。彼女は昌作の方をじっと見定めて、真面目な顔の表情を少しもくずさずに、眼で一寸会釈をしながら、彼の方へ近寄って来た。彼は眩しいような気持になった。瞬間に、そうした余りに初心な自分の心を、自ら恥しくまた意外にも感じて、右手で額の毛を撫で上げながら、恐ろしく口早に云った。
「菓子と珈琲とコニャックとをくれ給い。」
それから袂を探って煙草に火をつけながら、卓子の上に顔を伏せた。