Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
こういうと君はまたきっと、「いやしくも男子たるものがそう妻子に恋々としていられるか」というだろう。そこだ、僕のわからぬというのは。境遇の差があまりにはなはだしいというのもそこだ。
僕の今を率直にいえば、妻子が生命の大部分だ。野心も功名もむしろ心外いっさいの欲望も生命がどうかこうかあってのうえという固定的感念に支配されているのだ。僕の生命からしばらくなりとも妻や子を剥ぎ取っておくならば、僕はもう物の役に立たないものになるに違いないと思われるのだ。そりゃあまり平凡じゃと君はいうかもしれねど、実際そうなのだからしかたがない。年なお若い君が妻などに頓着なく、五十に近い僕が妻に執着するというのはよほどおかしい話である。しかしここがお互いに解しがたいことであるらしい。
貧乏人の子だくさんというようなことも、僕の今の心理状態と似よった理由で解釈されるのかもしれない。そうかといって、結婚二十年の古夫婦が、いまさら恋愛でもないじゃないか。人間の自然性だの性欲の満足だのとあまり流行臭い思想で浅薄に解し去ってはいけない。
世に親というものがなくなったときに、われらを産んでわれらを育て、長年われらのために苦労してくれた親も、ついに死ぬ時がきて死んだ。