Japanische Klassiker mit Furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme
お千代と省作との間に待ったとか待たないとかいう罪のない押し問答がしばらく繰り返される。身を傾けるほどの思いはかえって口にも出さず、そんな埒もなき事をいうて時間を送る、恋はどこまでももどかしく心に任せぬものである。三人はここで握り飯の弁当を開いた。
十
「のろい足だなあ」と二、三度省作から小言が出て、午後の二時ごろ三人はようやく御蛇が池へついた。飽き飽きするほど日のながいこの頃、物考えなどしてどうかすると午前か午後かを忘れる事がある。まだ熱さに苦しむというほどに至らぬ若葉の頃は、物参りには最も愉快な時である。三人一緒になってから、おとよも省作も心の片方に落ちつきを得て、見るものが皆面白くなってきた。おのずから浮き浮きしてきた。目下の満足が楽しく、遠い先の考えなどは無意識に腹の隅へ片寄せて置かれる事になった。
これが省作おとよの二人ばかりであったらば、こうはゆかなかったかもしれない。そこにお千代という、はさまりものがあって、一方には邪魔なようなところもあるが、一面にはそれがためにうまく調子がとれて、極端に陥らなかったため、思ったよりも今日の遊びが愉快になった。