Japanische Klassiker mit Furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme
汽車が日向駅を過ぎて、八街に着かんとする頃から、おはまは泣き出し、自分でも自分が抑えられないさまに、あたり憚らず泣くのである。これには省作もおとよもほとんど手に余してしまった。なぜそんなに泣くかといってみても、もとより答えられる次第のものではない。もっともおはまは、出立という前の夜に、省作の居間にはいってきて、一心こめた面持ちに、
「省さんが東京へ行くならぜひわたしも一緒に東京へ連れていってください」
というのであった、省作は無造作に、
「ウムおれが身上持つまで待て、身上持てばきっと連れていってやる」
おはまはそのまま引き下がったけれど、どうもその時も泣いたようであった。おはまのそぶりについて省作もいくらか、気づいておったのだけれど、どうもしようのない事であるから、おとよにも話さず、そのままにしていたのだが、いよいよという今日になってこの悲劇を演じてしまった。
「あんまり人さまの前が悪いから、おはまさんどうぞ少し静かにしてください」
強くおとよにいわれて、おはまは両手の袖を口に当てて強いて声を出すまいとする。抑えても抑え切れぬ悲痛の泣き音は、かすかなだけかえって悲しみが深い。