Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

省作は本を持ったまま仰向きにふんぞり返って天井板を見る。天井板は見えなくておとよさんが見える。

今夜は湯に行かない方がええかしら。そうだゆくまい。行かないとしよう。なに行ったってえいさ。いやいや行かない

方がえい。ゆくまいというは道徳心の省作で、行きたい行きたいとするのは性欲の省作とでもいおうか。一方は行かない方がえいとはいうけれど、一方では行きたい行きたいの念がむらむらと抑え切れない。

もしおとよさんが、こっそり湯端へきて何とか言ったらどうしよう。こう思うと気味が悪くて恐ろしくて、腹がわくわくする。省作はまた耳がほかほかしてきた。行かない方がえいなア。あアゆくまいゆくまい。こう口の底でいうて見る。ゆきたい心はかえって口底にも出てこず、行きたいなどとは決していわないが、その力は磐石糊のように腹の底にひっついていて、どんなことしたって離れそうもしない。果てはつかれてぼんやりした気分になってると、

「省作省作、えい湯だど。ちょっともらっておいで。隣でも待ってるよ」

姉が呼ぶのに省作は無意識に立ってしまった。もうなんにも考えずに、背戸の竹山の雨の暗がりを走って隣へいってしまった。