Japanische Klassiker mit Furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme
一念深く省作を思うの情は増すことはあるとも減ることはない。話し合いで別れて、得心して妻を持たせながら、なおその男を思っているのは理屈に合わない。いくら理屈に合わなくとも、そういかないのが人間のあたりまえである。おとよ自身も、もう思うまいもう思うまいと、心にもがいているのだけれど、いくらもがいてもだめなのである。
「わたしはまあ、しようがないなあ、どうしたらえんだろ、ほんとにしようがないな」
人さえいなければそういって溜息をつくのは夜ごと日ごとのことである。さりとてよそ目に見たおとよは、元気よく内外の人と世間話もする。人が笑えば共に笑いもする。胸に屈託のあるそぶりはほとんど見えない。近所隣へいった時、たまに省作の噂など出たとておとよは色も動かしやしない。かえっておとよさんは薄情だねいなど蔭言を聞くくらいであった。それゆえおとよが家に帰って二月たたないうちに、省作に対するおとよの噂はいつ消えるとなしに消えた。
胸にやるせなき思いを包みながら、それだけにたしなんだおとよは、えらいものであるが、見る人の目から見れば決して解らぬのではない。
燃えるような紅顔であったものが、ようやくあかみが薄らいでいる。