Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (のぎくのはか) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.539 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

今度は陸路市川へ出て、市川から汽車に乗ったから、民子の近所を通ったのであれど、僕は極りが悪くてどうしても民子の家へ寄れなかった。また僕に寄られたらば、民子が困るだろうとも思って、いくたび寄ろうと思ったけれどついに寄らなかった。

思えば実に人の境遇は変化するものである。その一年前までは、民子が僕の所へ来て居なければ、僕は日曜のたびに民子の家へ行ったのである。僕は民子の家へ行っても外の人には用はない。いつでも、

「お祖母さん、民さんは」

そら「民さんは」が来たといわれる位で、或る時などは僕がゆくと、民子は庭に菊の花を摘んで居た。僕は民さん一寸御出でと無理に背戸へ引張って行って、二間梯子を二人で荷い出し、柿の木へ掛けたのを民子に抑えさせ、僕が登って柿を六個許りとる。民子に半分やれば民子は一つで沢山というから、僕はその五つを持ってそのまま裏から抜けて帰ってしまった。さすがにこの時は戸村の家でも家中で僕を悪く言ったそうだけれど、民子一人はただにこにこ笑って居て、決して政夫さん悪いとは言わなかったそうだ。これ位隔てなくした間柄だに、恋ということ覚えてからは、市川の町を通るすら恥かしくなったのである。