Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
そういうと、クスクスと笑いだした。親馬鹿も、ここまでくれば行きどまりだと、滋子は、なにをいう気もなくなって、
「そんな目にあって、笑っていれば、世話はないのよ」
「だって、おかしいじゃないの。あたしゃ、汽車の便器の蔽い蓋に腰をかけて、手ばなしで泣いていたの。その恰好を思いだすと、笑わずにゃ、いられないのよ」
「まあまあ、たんと、とぼけていらっしゃい。あなたがおっしゃるから、あたしもいいますけど、ほんとうに、あのときぐらい、困ったことはなかった……朝になっても、伊作は帰ってこない。あなたは竺仙の紋付の羽織かなんか着て、チンと坐ってるでしょう。巴里には、お元日なんかないんだって、言ってきかせたって、そうかと、すぐ話のわかるひとじゃなし、大急ぎでマドレーヌのエデアールという店へ駈けつけると、錨の印のついた、錨正宗という、ふしぎな銘酒なんですが、みな売れちゃって、情けないことに、一合瓶がたった一本だけ……しょうがないから、それを仕入れてきて、柄付鍋で火燗をして、油漬鰯で一献献じたのはいいんだけど、なにしろ七勺たらず、二人で、ひと舐めふた舐めしたと思ったら、それでおしまい……膝に手を置いて、神妙にあとを待っているから、お屠蘇はもうチョンなのよというと、おやおや、へんだねえ。