Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のはぎ

野萩

久生 十蘭

Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「電報も、その方が打ってくだすったのね」

「そうなのよ……でも、おかしなことだったの。あわてていたもんだから、電報の文句だけいって、若旦那の所をいうのを忘れちゃったんだから、なんにもなりゃしない。汽車が出てから気がついて、巴里へ着くまで心配のしどおしだったけど、あなたが出ていてくれたので、ほっとしたわ」

伊作のほうはともかく、ブリュッセルへ電報を打つところまで気をきかしたのは、誰だったのだろうと思って、

「その方のお名前、伺って?」

「それが、つい、気がつかずだったの。でも、あの方なら、どこでお逢いしても、すぐわかる。汽車が出るまで、ホームで見送ってくだすったけど、あんな愁いのきいた、眼に沁みるような美しい顔、見たことがない。いまでも、ありありと眼の底に残っているわ」

そんなことをいいながら、籠信玄から塩せんべいをだして、

「あなた、好きだったわね、銀座の田丸屋よ。荷物が着くと、どっさり入っているわ」

のどかな顔で、移りかわる河岸の景色をながめていたが、薄靄の中でぼんやりと聳えているエッフェル塔を見つけると、うれしそうに手を拍って、

「ちょいと、あれ、エッフェル塔でしょう……巴里の万国博覧会といって、よくあの写真を見せられたもんだった。