Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
滋子はイライラして、
「どうしたのかしら、ひどく遅いわね。もう二時間になるわ」
腹立ちまぎれにあたりちらすと、
「どこかへ遊びに行って、こっちのことなんか、忘れてしまったんだろう」
安は、こちらへ背を見せたまま、気のない調子でいった。
「それにしたって、こんなに待ちこがれているひとがいるのを、知らないわけでもあるまいし」
安は、居なりに、こちらへむきかえると、
「あたしゃ、いつも待たされどおしよ。日本で待ち、巴里へ行っちゃ待ち、この二十年、若旦那の帰りばかり待って、暮してきたようなもんだわ……巴里じゃ、窓のそばの天鵞絨椅子に坐って、足音に耳をたてていたっけ……でも、それは、こっちの我儘……子供が大きくなれば、母親なんかいらなくなる。それはあたりまえのことなの……婆ァ、うるせえ、はやく帰っちまえって、宿から追いだされてしまったけど、うるさがらせに行った、あたしのほうが悪いんだから、文句をいうセキは、ありはしない。でも当座は悲しいから、帰る汽車の中で、マルセーユまで、泣きづめに泣いたわ。フランス人に見られるといやだから、廊下へ出て泣いたり、はばかりへ入って泣いたり……」