Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
……あたし、すこし話があるのよ。(といって久我の手をとると、勝手なほうへずんずん歩きだした)あたし、あなたのしたことなんでも知っててよ」
「なんで、僕のあとなどついて歩く?」
鶴はちょっと眼を伏せて、
「それは言えないの」
「じゃ、神戸のときも僕をつけてたの?」
「そうよ。……でも、そんなことどうだっていいじゃないの。……あなた、さっきから三度もたべもの屋の窓をのぞきこんだわね。あなたは、たべものにむずかしいひとなのね」
あまり見当ちがいなので、笑いださずにはいられなかった。
「僕は金がなくて、昨日からなにも喰べていないんだよ」
鶴は立ちどまって眼をまるくした。急によろめくほど久我の腕をひっぱると、
「喰べましょう。……あたしお金もってる」
「ありがたいが、……君に喰べさせてもらうわけはないさ」
「いや、借がある。……〈シネラリヤ〉にいたとき、チップくれたわね。そのつぎに来たとき、またくれたわね。……それを返すのよ。……さあ、歩けったら、歩かないと、……蹴っとばすから!」
むやみに引っぱって、〈北京〉という中華飯店へつれこんだ。
夕食時にすこし間があるので、店のなかには人影がなく、紫檀の食飯卓の上でひっそりと白菊が薫っていた。