Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
手さぐりで壁の点滅器をおす。……照明がはいって、そこで虐殺の舞台装置が、飛びつくように、一ペンに眼の前に展開された……。
敷布のくぼみの血だまり、籐椅子の上の金盥には、赤い水が縁まで、なみなみとたたえられている。血飛沫が壁紙と天井になまなましい花模様をかいている。……そのすべてから、むせっかえるような屠殺場の匂いがたちのぼっている。寝台と壁の間の床の上に、裸の人間の足……乾いて小さくしなびた老人の蹠がつきだされていた。
「おや! あそこにいた。……ひどいことをしやがったな」
巡査はハンカチで首のまわりを拭いた。
気抜けしたような男のうしろには、五人の客が、明るい電灯の光の下で、ねっとりとかがやく血だまりを見ていた。藁蒲団をしみ通した血が、ポトリ、ポトリ、と床のうえにしたたるのがはっきりときこえる。
二十日鼠は背中を丸くして、歯の間から荒い呼吸をしていた。草笛のように甲高くヒュウヒュウ鳴る音は、血の滴る陰気な音と交りあって、ひとの気持ちをいらいらさせた。
娘は青年の方をふりかえると、溺れかかるような眼つきをした。青年は急いで娘の傍へよると、腕のなかへ抱えた。