Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.957 Zeichen · 31 Bildschirme
白昼の一刻一ときが、寂然と沈んで、経ってゆく。
もうあの、竜手様のことなど、老夫婦のあたまのどこにもなかった。
庄太郎は、弁当を持って行って、午飯には帰らない。
正午だ。惣平次とおこうが、さし向かいで、茶漬けを流し込む。
食休みに、雑談になって、おこうが、
「お前さんどう考えているか知らないけれど、庄太郎に、もうそろそろねえ――。」
「嫁の心配かえ。」
「早すぎるってことはありませんよ。心掛けておかなければ、ほかのことと違って、こればかりは、急に、おいそれとは、ねえ。」
「そうだ――しかし、早えもんだなあ。昨日蜻蛉を釣っていたように思う庄公が、もう嫁のなんのと、そのうちに初孫だ。婆さん、めでてえが、おれたちも、年齢を取ったなあ。」
「ほんとにねえ。それにつけても、庄太郎は働き者だけに、いっそう早く身を固めてやったほうがよくはないかと、わたしゃ思いますよ――おや! なんでしょう?」
突然、石場を飛んで来る二、三人の乱れた跫音が、耳を打った。
ふり向く間もなかった。
開け放しの土間ぐちを、人影が埋めて、走りつづけて来たらしく、迫った呼吸が、家じゅうにひびいた。