Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.085 Zeichen · 21 Bildschirme
その良人というのも出て来てなにくれと懇切に見てくれた。たしかにどこかで見たような顔、そんなような気がするだけで、どこの誰か、果して真個に会ったことのある仁か、与惣次はいっこう思い出せなかった。咽喉が痙攣って物を言おうにも口が開かなかった。口は開いても声をだす術を忘れ果てていた。身体は鉛のように重かった。手の指一本が、とても与惣次には動かせないほどだった。
今夜は泊ってゆっくり休んで行くようにと、男も女も口を揃えて言っているらしかったが、その声音がまるで水の底からでも聞こえて来るようだった。こう大儀じゃ夜道どころか寝返り一つ打てやしめえし、と与惣次は肚を据えた。まあ何家でもいいや、今晩はここに厄介になれ――。
「儂はいささか薬事の心得があります。今、水薬を調じて上げるほどに、そいつを服してまずお気を鎮められい。よっく眠れることでござろう。」
主人は変な言葉遣いをした。どこかで見覚えのある顔、与惣次はしきりに考えたが、漸次にその力がなくなった。譬えば雪が解けるように、頭脳の働きが鈍くなってくるのである。それでも、主人の手が自分の口を割って冷茶のような水物を流し込んでくれたまでは、ぼんやりながら薄眼で見ていた。