Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.085 Zeichen · 21 Bildschirme
与惣次は眠った。夏の夜の更け行くままに、昏々として彼は眠り続けた、底無しの泥沼へ沈むような、自力ではどうすることもできない熟睡であった。
暗黒の中にじいっとしているような心持だった。ときどき人声がした。枕頭を歩き廻る跫音も聞こえた。眼も少しは見えるようだった。と、そのうちに、泡が浮んで破れるように、与惣次はぽっかりと気がついた。
真夜中である。
油を吸う燈心の音、与惣次は首を廻らした。身の自由も今は幾らか返ったらしい。が、起き上ることはできなかった。枕から見渡す畳の上、羽虫の影が点々としている下に、倒屏風が立ててあるのが、第一に与惣次の眼に入った。寝ている敷物はいつしか荒筵に変っている。瞳を凝らしてなおも窺えば、枕に近い小机に樒が立ち、香を焚き、傍には守刀さえ置いてあり、すこし離れて、これは真新しい早桶、紙で作った六道銭形まで揃っている工合い。
「こりゃあひょっとすると知らねえ中に俺あ死んだのかな。」
与惣次は思った。「それにしてもいやに手廻しが早えこったが――。」
唐紙が開いて女がはいって来た。与惣次を見て驚いている。手を上げて何かの合図。続いて主人が現れた。