Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.625 Zeichen · 26 Bildschirme
」
二階の六畳へ通ると、出抜けにこう言って、藤吉はどっかと胡坐をかいた。味噌松は背後に立った。
手早く畳んだらしい蒲団に凭れて、孫右衛門女房おみつがきっとなって顔を上げた。七、八にはなっていようが、どう見ても二十三、四と言いたいほどの若々しさ。寝乱れ姿のしどけなく顔蒼ざめた様子も、名打ての美形だけあって物凄いくらい。死んだ主人とは三十近くも齢が違うわりに、未だかつて浮いた沙汰などついぞ世間に流れたことはなかった。孫右衛門実母お定の探索の要で藤吉も今まで二、三度会ったことはあるが、こうしてつくづく顔を見るのはこれが初めて。さすがに泣き腫らした眼から鼻へ、いかにも巧者な筋が通っているのを、藤吉は素早く看て取った。帰らぬ良人を待ち侘びて独寝を辿ったものか――部屋はこぢんまり片づいていた。
「釘抜の親分え。」いきなり味噌松が沈黙を破った。「お神さんの利益にゃあならねえが、思い切って申し上げやしょう。始め、わっちが裏戸を叩いて、大変だ大変だ、旦那が大変だ、って報せたと思いなせえ。するてえと、起きてたものと見えてお神の声で、なんだえ、松さんかえ、朝っぱらから騒々しい、今行くよ、って言うのが二階から聞こえやした。