Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.547 Zeichen · 27 Bildschirme
雨風は募る一方、彦兵衛はよほどさきへ行っているとみえて、
「おう――い。」
と呼んでも返事がない。橋の上で藤吉は着物をかなぐり捨てるなり、欲しがる風にくれてやった。元結が切れて、頭髪をばっさり被った勘弁勘次が、泥を掴んで追いついた。
「勘か。」
「おう、親分。」
相方何か言っているらしいが双方ともに聞こえない。とたんにぴかりっ、一時、あたりが白じらと明るくなる。
「お、あすこに彦! 勘、来い。」
「まいりやしょうぜ。」
身体を斜に風の当りを弱めながら小笠原長門守様前を突っ切ると、次の一廓が松平修理太夫と和気行蔵の二構え、お長屋門の傍から松が一本往来へ枝を張っている。その下に彦兵衛が立ち、彦の足許に、名犬甚右衛門がうずくまっていた。
裸体の親分を見るより早く、彦兵衛は己が合羽を脱いで着せる。序でにいまいましそうに、
「こん畜生め、」と甚右衛門を蹴って「親分、この犬あきの字でさあ。ちっ、目的もなしに吠え立てやがったに違えねえ。真に受けて飛び出して来たわしらこそ好え面の皮だ。機もあろうにこの荒ん中を――。」
生樹の悲鳴、建物の響き。地を叩く雨声、空に転がる雷、耳へ口を寄せても根限り呶鳴らなければ通じない。