Japanische Klassiker mit Furigana
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どん・こん・ろく
鈍・根・録
宮本 百合子
Lesen Sie 鈍・根・録 (どん・こん・ろく) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.159 Zeichen · 9 Bildschirme
「お姉さま、よくそうやってかけるわね」
と云った。わたしは昔のひとがやるように巻紙を片手にもち、筆のさきをもって手紙を書いているのであった。書きながら上の空でわたしは、
「うむ」
と云い、やや暫く間をおいて、
「おかあさまにおそわったんだよ」
と、筆に墨をふくませつつ妹の顔は見ず云った。
「ふーん」
顎を振るようにしておかっぱの髪をパラリとさばき、黙っていたが、やがてころりと仰向きになって、
「――何だか気ぬけがしちゃった」
と、弱々しい、しなやかな余韻のある声で云った。
わたしは黙っている。自分はどの手紙にも、母が今生涯を終ったことは、母にとって最もよい終焉であったと書き、その手紙にもそのことを大きい疑いをもたぬ字でかいているのであった。
母が父の存命中、生涯を終ったことは、母にとって、一家にとって、一つの幸福であると云う考えは、明瞭につよくわたしの心を貫いて存在している。
葬式の前、一寸人が絶えた時、袴のひだをキチンと立てて坐っていた父が、そこに一人だけ離れて坐っていた自分に向って、
「もうすこし生かしておいてやりたかったが、結局今死んで、おっかさんは却って満足出来ただろう」