Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Lesen Sie 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.863 Zeichen · 73 Bildschirme
タクシがやがて動き出した。
「左様なら」と私は帽子を取った。
「左様なら」と佐伯氏は微笑した。
だが私にはその微笑が、ひどく気味悪く思われた。
名古屋の夜景は美しかった。鶴舞公園動物園の横を、私のタクシは駛って行った。
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私のタクシは駛って行った。
公園は冬霧に埋もれていた。
公園を出ると町であった。町の燈も冬霧に埋もれていた。
名古屋市西区児玉町、二百二十三番地、二階建ての二軒長屋、新築の格子造り、それが私の住居であった。
そこへタクシの着いたのは、二十五分ばかりの後であった。
妻の粂子は起きていた。
「遅かったのね」と咎めるように云った。私をしっかりと抱き介えた。それから頬をおっ付けた。これが彼女の習慣であった。子供のように扱うのであった。
二階の書斎へ入って行った。
「おい好い物を見せてあげよう。これはね、猶太の銀貨なのさ」
財布から銀貨を取り出した。
「まあやけに大きいのね」
彼女は愉快そうに笑い出した。彼女の歯並は悪かった。上の前歯は二本を抜かし、後は全部義歯であった。笑うと義歯が露出した。それが私には好もしくなかった。だがその眼は可愛かった。眼尻の方から眼頭の方へ、一分ほど寄った一所の、下瞼が垂れていた。