Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Lesen Sie 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.863 Zeichen · 73 Bildschirme
こうして彼女の家の前へ立った。門を入り玄関へかかった。
「案内を乞うにも及ぶまい」――で私は上って行った。
書斎の扉が開いていた。
大きく茫然と眼を見開き、――白昼に夢を見ているような、特殊な顔を窓の方へ向け、彼女が寝椅子に腰かけていた。
私は書斎へ入って行った。彼女の横へ腰を掛けた。しばらくの間黙っていた。
沈黙が部屋を占領した。
黙っていることは出来なかった。私は厳粛に彼女へ訊いた。
「話しておくれ。ねどうぞ。信じていいのかね、あの人の言葉を? 私はあの人に逢ったのだよ」
だが彼女は黙っていた。ただ弛そうに身を動かした。非常に疲労ているらしかった。
私は厳粛にもう一度訊いた。
「あの高価な白金は、お前の物になったんだね。それを信じていいのだね?」
すると彼女は頷いた。それから私の手を取った。彼女の両手は熱かった。そうして劇しく顫えていた。彼女の咽喉が音を立てた。どうやら固唾を飲んだらしい。
私はその手を静かに放し、書斎を抜けて玄関へ出た。
「やっぱりいけない。この家は」
私は門から外へ出た。
「彼女は一層悪くなった。……嬉しさに心を取り乱している。そいつが移ってはたまらない」