Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
がひびいて来た。かすかにごくかすかに夜の空気の中をふるえてつたわって来るその音。――白金の矢の様に光君の心をいた。光君の足は自と動く。耳をすまして体は少し前かがみ、足をつまさき立ててかるくはかどる。一足――一足、一足毎に近づく音はますますさえる。魂は飛んでもぬけのから、もぬけのからのその体を無形のものは益々誘う。飛んだ魂は、夜闇の中に、音に添うてはパッとはなれ、はなれてはまた添い、共にもつれてクルクルクル見えないところで舞の振事、魂がその音か、その音が魂か、音に巻かれて魂はますますとんで行く。とんでとんでとびぬいてやがてもどった魂をもとにおさめてハッときづけば、無残、しとみ戸はとざされてその中から琴の音、ぞっとするような、うっとりするような、抱えたような、投げたような、海の中に柳が有ったらお月様のかげの中に身をなげてしにたいような、立って動かぬしとみ戸に影うすくよって聞く人は声なくて只阿古屋の小玉が頬に散る。余韻を引いて音はやんだ、人はまだ動かぬ。
(五)
身じまいをしてかがやく様に美くしくなった姿を几帳の陰になつかしいうつり香をただよわせて居るのは此の部屋の主わずか十六の紫の君である。