Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
なまめいたそらだきの末坐になみ居る若人の直衣の袖を掠めると乱れもしない鬢をきにするのも女房達が扇でかおをかくしながら目だけ半分のぞかせては、陰から陰へ、
「マア御らんなさいませ、あの弟君を! マア何と云うネエ、……」
と目引き袖ひきするのもあるのを上からのぞく御月さま、「ても笑止な」と思うで有ろう。数多の女達の中であざみの中の撫子かそれよりもまだ立ちまさって美しく見えて居る紫の君は扇で深くかおをかくして居ながらもその美くしさをしのばする、うなじの白さ、頬の豊けさ、うす紅にすきとおるような耳たぼ、丈にあまる黒かみをなだらかにゆるがせておぼろ月のかげを斜にうけ桜の色の□□を匂わせて居るようすは何と云ったらこの美くしさは云いつくされるかと思われるほどで有る。男達はまぼしいものを見るように曲の多い管絃をはなれた心と目とをこの女君にむけて居た、けれどもまともに見ることは出来なかった。弟君、いくら美くしいと云っても人なみの心地と、若さにその若さをほてる様にドキンドキンと波うつあつい血しおを持って居た。一目見て「得がたい美しい方じゃあないか」若君の心の片いっ方にひそむ何し知れない虫はささやいた。