Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
とでも。私は気が狂いそうだ、私の心はどうしても貴女に通じない、サ、どうぞ何とか云って下さい」
若君の声ははずんで絶々に女君の耳にささやかれる。女君のかおは青ざめてふるえもいつか止まって小鬢の毛一本もゆれて居ない。口は封じられた様にかたくとざされて人形の様になった女君に、気のぼうとなって体の熱さばかりのまして行く男君は尚熱心に云う。
「貴女は知って居らっしゃるでしょう、恋しい人の門に立てる錦木の千束にあまっても女の心が動かない時には男はいつでも苦しい悲しい思をのがれるためにまだ末長い命をちぢめると云うことを。私の立てた錦木はもう千束にとうにあまって居ます、それだのに貴女は、貴女は」
女君の目からは涙が流れた。恐れてでも、若者の心を察してでもなかった。女君の心はこんなことを云われる自分はどこかたりないところがあるからだと云う思でみちみちて居た。涙は口惜しい意味の涙であった。
「涙! 誰への涙何が悲しくって。
貴女は私が貴女の二親のないので馬鹿にした恋を仕掛けて居ると思って居らっしゃるんではないの、そうじゃあないの。私の此の命にかえてまでの恋は貴女にはそんなに思われているのか知ら、そんなにまで下らないものに思われて居るのか知ら、それほどまで」