Japanische Klassiker mit Furigana
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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 鍵 (かぎ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.182 Zeichen · 200 Bildschirme
と、敏子が云う。「パパは」と云うと、「今日は珍しくよう寝たはる。もう三時間以上になるわ」と云う。なるほど凄い鼾ごえである。「お嬢さんにお願いして、お風呂へ行って参りました」と、小池さんが云う。湯上りの色つやのよい顔をてかてかさせている。あ、そうだったか、小池さんは銭湯へ行って来たのか、―――私は何がなしにハッとする。何かしら敏子が作為を施したらしいことを感じる。―――もっとも、夫が臥床してからは、家の風呂を沸かしたことは二三度しかない。私も、小池さんも、婆やも、大概隔日か三日置きぐらいに、昼間のうちに銭湯へ浴びに行くことにしているのであるし、今日あたりは小池さんが行く番であるから、行って来るのに不思議はない。が、敏子はそれを計算に入れて、病人と自分と二人きりになるように、私を外へ出したのではあるまいか。ついウッカリして、そういう場合が生じ得ることに、私は考え及ばなかった。いつもなら当然気が付くのであるが、(小池さんの風呂は長湯で、五六十分はかかるということも、私は知っていたはずであるが)「関田町で風呂が沸いている」と云われて、さてはと胸をときめかせて思慮を失ったのである。