Japanische Klassiker mit Furigana
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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 鍵 (かぎ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.182 Zeichen · 200 Bildschirme
それが昨日の払暁の午前六時頃のことだったらしいのだが、それ以後ずっと意識がハッキリしつづけていたわけではない。私は頭が割れるように痛み、全身がズシンと深く沈下して行くのを感じつつ幾度も眼が覚めたり睡ったりすることを繰り返していた、―――いや、完全に覚め切ることも睡り切ることもなく、その中間の状態を昨日一日繰り返していた。頭はガンガン痛かったけれども、その痛さを忘れさせる奇怪な世界を出たりはいったりしつづけていた。あれはたしかに夢に違いないけれども、あんなに鮮かな、事実らしい夢というものがあるだろうか。私は最初、突然自分が肉体的な鋭い痛苦と悦楽との頂天に達していることに心づき、夫にしては珍しく力強い充実感を感じさせると不思議に思っていたのだったが、間もなく私の上にいるのは夫ではなくて木村さんであることが分った。それでは私を介抱するために木村さんはここに泊っていたのだろうか。夫はどこへ行ったのだろうか。私はこんな道ならぬことをしてよいのだろうか。………しかし、私にそんなことを考える餘裕を許さないほどその快感は素晴らしいものだった。夫は今までにただの一度もこれほどの快感を与えてくれたことはなかった。