Japanische Klassiker mit Furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme
と勝閧をあげて立去った。」
「そうすると、友蔵にも何かの弱味があるんですね。」
「その訳はあとにして、鯨の一件を片付けてしまうことにしよう。鯨はとどこおりなく由兵衛の手に渡って、十三日からいよいよ奥山の観世物小屋に晒されることになったが、これはインチキでなく、確かに真物だ。殊に鮫洲の沖で鯨が捕れたということは、もう江戸じゅうの評判になっていたので、初日から観客はドンドン詰めかけて来る。奥山じゅうの人気を一軒でさらった勢いで、由兵衛も大いに喜んでいると、三日ばかりの後には肝腎の鯨が腐りはじめた。
むかしの四月なかばだから、今日の五月中旬で陽気はそろそろ暑くなる。あいにく天気つづきで、日中は汗ばむような陽気だから堪らない。鯨は死ぬと直ぐに腐り出すということを由兵衛らは知らない。もちろん防腐の手当なぞをしてある訳でもないから、この陽気で忽ちに腐りはじめて、その臭気は鼻をつくという始末。物見高い江戸の観客もこれには閉口して、早々に逃げ出してしまうことになる。その評判がまた広まって、観客の足は俄に止まった。
こうなっては仕方がない。鯨よりも由兵衛の方が腐ってしまって、何か他のものと差換えるあいだ、ひとまず木戸をしめることになった。