Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

やすりくず

鑢屑

寺田 寅彦

Lesen Sie 鑢屑 (やすりくず) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.364 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

十七

入歯をこしらえた。

何年来食ったことのなかった漬物などを、ばりばり音を立てて食うことが出来る。はなはだ不思議な心持がする。パンの皮や、らっきょうや、サラダや、独活や、そんなものでも、音を立てて食うことに異常な幸福を感じる。

歯のいい人は、おそらく、この卑近な幸福を自覚する僥倖を持たないに相違ない。

この幸福がいつまで持続するか疑問である。たぶん一種の指数曲線か何かに従って、漸近的にゼロに向かって行くだろう。

こんな幸福があまり持続しては、困る事だろう。幸福も不幸福も、変化の瞬間が最高点で、それからあとは、大地震の余震のように消えて行く。

そのおかげで、われわれは、こうやって生きて行かれるのかもしれない。

十八

入歯は、やはり西洋人のこしらえ始めたものだろうと思う。

西洋食を食っている間は、めったに入歯の困難は起らない。ところが、茶漬をかきこんだり、味噌汁を吸ったりすることになると、とかく故障が起りがちである。いわんや、餅や、飴などは論外である。

これは何事を意味するか。

入歯を、発明し、改良して来た西洋人が、もしわれわれと同じ食物を食って生きているのだったら、そうしたら、餅を食っても、飴を食っても、故障の起らないような入歯が、今頃は出来ているのではあるまいか。