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Japanische Klassiker mit Furigana

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かいひいちようちょう

開扉一妖帖

泉 鏡花

Lesen Sie 開扉一妖帖 (かいひいちようちょう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.898 Zeichen · 40 Bildschirme

Aozora Bunko

「南無、身延様――三百六十三段。南無身延様、三百六十四段、南無身延様、三百六十五段……」

もう一息で、頂上の境内という処だから、団扇太鼓もだらりと下げて、音も立てず、千箇寺参りの五十男が、口で石段の数取りをしながら、顔色も青く喘ぎ喘ぎ上るのを――下山の間際に視たことがある。

思出す、あの……五十段ずつ七折ばかり、繋いで掛け、雲の桟に似た石段を――麓の旅籠屋で、かき玉の椀に、きざみ昆布のつくだ煮か、それはいい、あろう事か、朝酒を煽りつけた勢で、通しの夜汽車で、疲れたのを顧みず――時も八月、極暑に、矢声を掛けて駆昇った事がある。……

呼吸が切れ、目が眩むと、あたかも三つ目と想う段の継目の、わずかに身を容るるばかりの石の上へ仰ぎ倒れた。胸は上の段、およそ百ばかりに高く波を打ち、足は下の段、およそ百ばかりに震えて重い。いまにも胴中から裂けそうで、串戯どころか、その時は、合掌に胸を緊めて、真蒼になって、日盛の蚯蚓でのびた。叔父の鉄枴ヶ峰ではない。身延山の石段の真中で目を瞑ろうとしたのである。

上へも、下へも、身動きが出来ない。一滴の露、水がなかった。

酒さえのまねば、そうもなるまい。