Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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およしのおんりょう

阿芳の怨霊

田中 貢太郎

Lesen Sie 阿芳の怨霊 (およしのおんりょう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.310 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

刀は外れて襖へ的った。其の音を聞きつけて婢が飛んで来た。

「来たな」

由平は婢の肩端へ斬りつけた。婢は悲鳴をあげて倒れた。婢の悲鳴を聞きつけてあがって来た主翁は、由平の後から抱き縮めようとした。由平は腰をひねって主翁を振りはなして、逃げようとする主翁に背後から血刀を浴びせた。主翁は廊下へ半身を出して倒れた。同時に由平の体はよろめいて前へ泳ぎ、主翁の死体に躓いて往来へ転がり落ちた。由平は刀を下敷にして死んだのであった。

それから何年か経って、由平の姪が某製糸工場の女工になって、寄宿舎に寝ていると、某夜廊下に人の跫音がして障子が開いた。姪は驚いて其の方へ眼をやった。其処には男の姿があった。姪は驚いて咎めようとしたが声が出なかった。そんなことが三晩続いた。姪は鬼魅悪くなって寄宿舎を逃げ出そうと思ったが、ふと其の男を何処かで見たことがあるような気がしたので、いろいろと考えているうちに、それは叔父の由平に似ているのだと云うことに気がついた。そこで彼女は早速寺へ往って叔父のためにお経をあげてもらった。すると、其の夜から男の姿が現われないようになった。

阿芳の自殺した江此間の海岸は、今は海水浴場になって、附近には立派な別荘や旅館などが建っているが、阿芳の投身したと云われる所は、三百坪ばかりの空地になっていて、何人もそれ