Japanische Klassiker mit Furigana
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かりさかごえ
雁坂越
幸田 露伴
Lesen Sie 雁坂越 (かりさかごえ) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.263 Zeichen · 28 Bildschirme
それが眼に入るか入らぬに屹と頭を擡げた源三は、白い横長い雲がかかっている雁坂の山を睨んで、つかつかと山手の方へ上りかけた。しかしたちまちにして一ト歩は一ト歩より遅くなって、やがて立止まったかと見えるばかりに緩く緩くなったあげく、うっかりとして脱石に爪端を踏掛けたので、ずるりと滑る、よろよろッと踉蹌る、ハッと思う間も無くクルリと転ってバタリと倒れたが、すぐには起きも上り得ないでまず地に手を突いて上半身を起して、見ると我が村の方はちょうど我が眼の前に在った。すると源三は何を感じたか滝のごとくに涙を墜して、ついには啜り泣して止まなかったが、泣いて泣いて泣き尽した果に竜鍾と立上って、背中に付けていた大な団飯を抛り捨ててしまって、吾家を指して立帰った。そして自分の出来るだけ忠実に働いて、叔父が我が挙動を悦んでくれるのを見て自分も心から喜ぶ余りに、叔母の酷さをさえ忘れるほどであった。それで二度までも雁坂越をしようとした事はあったのであるが、今日まで噫にも出さずにいたのであった。
ただよく愛するものは、ただよく解するものである。源三が懐いているこういう秘密を誰から聞いて知ろうようも無いのであるが、お浪は偶然にも云い中てたのである。