Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おしゃく

雛妓

岡本 かの子

Lesen Sie 雛妓 (おしゃく) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.482 Zeichen · 53 Bildschirme

Aozora Bunko

わたくしは再び眼を上げて、蓮の枯茎のOの字の並べ重なるのを見る。怱忙として脳裡に過ぎる十八年の歳月。

ふと気がついてみると、わたくしの眼に蓮の枯茎が眼について来たのには理由があった。

夜はやや更けて、天地は黒い塀を四壁に立てたように静まり閉すにつれ、真向うの池の端の町並の肉色で涼しい窓々の灯、軒や屋根に色の光りのレースを冠せたようなネオンの明りはだんだん華やいで来た。町並で山下通りの電車線路の近くは、表町通りの熾烈なネオンの光りを受け、まるで火事の余焔を浴びているようである。池の縁を取りまいて若い並木の列がある。町並の家総体が一つの発光体となった今は、それから射出する夜の灯で、これ等の並木は影くろぐろと生ける人の列のようにも見える。並木に浸み剰った灯の光は池の水にも明るく届いて、さてはその照り返しで枯蓮の茎のO字をわたくしの眼にいちじるしく映じさすのであった。更に思い廻らされて来るこれから迎えようとする幾歳かの茫漠とした人世。

水鳥はもう寝たのか、障子の硝子戸を透してみると上野の森は深夜のようである。それに引代え廊下を歩く女中の足音は忙しくなり、二つ三つ隔てた座敷から絃歌の音も聞え出した。