Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あめのやまぶき
雨の山吹
山本 周五郎
Lesen Sie 雨の山吹 (あめのやまぶき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.433 Zeichen · 33 Bildschirme
こんな自問自答を繰り返しながら、又三郎は寺井の宿へと戻った。そこまで来たことは慥かだし、手取川を越したようには思えなかったのである。もう日が昏れかかっていた。馬屋のある能登屋という宿で草鞋をぬいだ。
――明日は海辺のほうを捜してみよう。
夕食を済ませて、茶を啜りながらそう思うと、疲れて感情が脆くなっていたためもあろう、涙があふれてきて、止めることができなかった。
午後から吹きだした西北の風が、まだかなり強く、海ではしきりに波の音がしていた。又三郎は窓の障子をあけ、雨戸をあけた。冷たい風が松籟の音といっしょに、激しく吹き込んで来た。そちらは宿の裏手で、砂丘と松林が展望を遮っている、そうでなくとも海までは二十町あまりもあるのだが、波の音は高く、松風を凌いですぐま近のように聞えて来た。
「どこにいるんだ、汝生」彼は海のほうに向って呟いた、「――まだ生きているのか、それとももう死んでしまったのか」
吹き千切られた松の葉が、ぱらぱらと飛んで来た。空はきれいに晴れて、いちめんの星が生きもののようにまたたいていた。彼はながいこと窓に倚って、波の音に聞きいりながら、涙の乾くままに任せた。