Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
私は勤帰りの洋服姿がどうかすると路傍の腸売りの前に立止り、竹皮包を下げて、坂道をば監獄署の裏通りの方へ上って行くのを見ました。それが何という訳もなく、貧しい日本の家庭の晩餐の有様を聯想せしめます……。
借家の格子戸がガタガタいって容易に開かない。切張りをした鼠色の障子にはまだランプの火も見えない。上框は真暗だ。洋服の先生はかつて磨いた事もないゴム靴を脱捨て障子を開けて這入ると、三畳敷の窓の下で、身体のきかない老婆が咳をしている。赤児がギャアギャア泣いている。細君は夜になってから初めて驚き、台所の板の間に蛙の如くしゃがんで、今しも狼狽てランプへ油をついでいる最中。夫の帰った物音に引窓からさす夕闇の光に色のない顔を此方に振向け、油気失せた庇髪の後毛をぼうぼうさせ、寒くもないのに水鼻を啜って、ぼんやりした声で、お帰んなさい――。
すると、夫は返事の代りに、今頃ランプの掃除をするのかと、家事の不始末不経済を攻撃する。老母が夜具の中から匍い出して何かと横口を入れる。夫、妻、いずれの方へ味方をしても同じ事、一場の争論に花が咲く。其処へ七、八ツになる子供が喧嘩をして溝へ落ちたとやら、衣服を溝泥だらけにして泣きわめきながら帰って来る。