Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
それを堪え忍ぼうとするには全く益もない過去の追憶に万事を忘却する外はない……。
七夕の祭はいつか昨日と過ぎた。小夜更けてから降り出した小雨のまた何時か知ら止んでしまった翌朝、空は初めていかにも秋らしくどんよりと掻曇り、濡れた小庭の植込からは爽な涼風が動いて来るのに、種彦は何という訳もなく瓦焼く烟も哀れに橋場今戸の河岸に立初める秋の風情の尋ねて見たく、臥床を出るや否やいそいで朝飯を準えようと下座敷へ降りかけた時出合頭にあわただしく梯子段を上って来たのは年寄った宿の妻であった。しかも容易ならぬ事件を種彦に伝えたのである。
小雨そぼ降る七夕の昨夜久しく隠まって置いたかのお園は何処へか出奔してしまったものと見え今朝方寝床は藻抜の殻となり、残るは唯男女が二通の手紙ばかりという事である。種彦は机の上の眼鏡取るより早く男女の手紙を読み下した。海山にもかへがたき御恩を仇にいたし候罪科、来世のほどもおそろしく存じまゐらせ候……とあってお園の方の手紙にはただ二世も三世までも契りし御方のお身上に思いがけない不幸の起りしため、とてもこの世では添われぬ縁故、一先ずわが親里の知人をたより其処まで落延びてから心安く未来の冥加を祈り、共々にあの世へ旅立つという事の次第がこまごまと物哀れに書いてあった。