Japanische Klassiker mit Furigana
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あめ
雨
織田 作之助
Lesen Sie 雨 (あめ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.261 Zeichen · 44 Bildschirme
水を浴びてすくっと立っている眼の覚めるような鮮かな肢態に固唾を呑むような嫉妬を感じていた長屋の女が、ある時、お君の頸筋を見て、
「まあ、お君さんたら、頸筋に生毛いっぱい……」
生えているのに気がついたのを倖い、おおげさに言うので、銭湯の帰り、散髪屋へ立ち寄ってあたってもらった。
剃刀が冷やりと顔に触れたとたん、どきッと戦慄を感じたが、やがてさくさくと皮膚の上を走って行く快い感触に、思わず体が堅くなり、石鹸と化粧料の匂いの沁みこんだ手が顔の筋肉をつまみあげるたびに、体が空を飛び、軽部を想いだした。
そのようなお君にそこの職人の村田は商売だからという顔をときどき鏡にたしかめてみなければならなかった。しかし、その後月に二回はかならずやってくるお君に、村田は平気でおれず、ある夜、新聞紙に包んだセルの反物を持って路次へやってきて、
「思いきって一張羅イをはりこみましてん。すんまへんがひとつ……」
縫うてくれと頼むと、そのままぎこちない世間話をしながらいつまでも坐りこみ、お君を口説く機会を今だ今だと心に叫んでいたが、そんな彼の肚を知ってか知らずにか、お君は長願寺の和尚さんももう六十一の本卦ですなというつまらぬ話にも、くるりくるりと綺麗な眼玉を廻して、けらけら笑っていた。