Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ゆきのよる
雪の夜
織田 作之助
Lesen Sie 雪の夜 (ゆきのよる) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.221 Zeichen · 23 Bildschirme
家には一銭の現金もない筈だ。いろんな払いも滞っている。だから、珈琲どころではないのだ。おまけに、それだけではない。顔を見ているだけでも辛い松本と、どうして一緒に行けようか。
渋っているのを見て、
「ねえ、お行きやすな」
雪の降る道端で永い立話をされていては、かなわないと、口をそろえて女たちもすすめた。
「はあ、そんなら」
と、もう断り切れず、ちょっと待って下さい、いま店を畳みますからと、こそこそと見台を畳んで、小脇にかかえ、
「お待ッ遠さん」
そして、
「珈琲ならどこがよろしおまっしゃろ。別府じゃろくな店もおまへんが、まあ『ブラジル』やったら、ちょっとはましでっしゃろか」
土地の女の顔を見て、通らしく言った。そんな自分が哀れだった。
キャラメルの広告塔の出ている海の方へ、流川通を下って行った。道を折れ、薄暗い電燈のともっている市営浴場の前を通る時、松本はふと言った。
「こんなところにいるとは知らなんだな」
東京へ行った由噂にきいてはいたが、まさか別府で落ちぶれているとは知らなんだ――と、そんな言葉のうらを坂田は湯気のにおいと一緒に胸に落した。そのあたり雪明りもなく、なぜか道は暗かった。